痔の治療を受けても、痔の根本原因を放置しておくと再発します。再発しないためにも、快適な日常生活をすごすために、痔の根本原因を解消することが大切となります。そして、解消したい最大の痔の根本原因は「便秘」です。
便秘になると便が硬くなり、普段の何倍もいきむことになります。排便で強くいきんだり、長時問トイレに座りつづけていると、 肛門に負担がかかります。その結果として痔核が発生しますが、いきむ力が強くなれば、そのリスクがどんどん高くなります。さらに便秘が繰り返されると、痔核から出血したり、痔核が肛門の外に脱出するようになります。また、硬い便を無理に押し出そうとすると、肛門が裂けて裂肛になります。
便秘については、排泄期間は個人の環境や体質、生活習慣などによって人それぞれです。「毎日排便が無い=便秘」というわけではありません。実は、便秘の正確な定義はありません。一般的に便秘は「便の排泄が困難になり、体内に便が長い期間とどこおり、スッキリと良い便が出ていない状態」のことをいいます。排便の回数はあまり関係がなく、2日に一回の排便でも、スッキリと良い便が出ていれば便秘とはいいません。逆に、一日に何回も排便があっても、それが古い便で、良い便が出ない状態は便秘といいます。「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても、残便感がある状態。」日本内科学会では便秘をこう定義していますが、「便秘症」という場合、少しニュアンスが違ってきます。
「便秘によってお腹の張り、腹痛、残便感、食欲不振などの不快な症状があらわれ、日常生活に支障をきたすために治療の対象になる。」便秘症には、こうした意味合いが含まれてきます。便秘だと宿便になって、痔になるのか?というような心配をする方も多く、また、「宿便取り」の商品広告も多く見かけます。便秘に悩む若い女性は、ことさら「宿便」を気にする傾向があります。
しかし、便は食べ物のカスと腸内細菌の死骸、それにはがれ落ちた腸の粘膜がまざったものです。腸の粘膜がはがれ落ちるとき、便も一緒に腸壁からはがれます。(医学的に宿便というものはないのです)
便秘だけでなく、下痢も痔の大敵です。
下痢になると、肛門括約筋はいつも緊張している状態になります。さらに何度もトイレにいかなければなりませんが、排便姿勢を取るたびに肛門は鬱血します。下痢になると、水のような便が激しい勢いで肛門を通過します。その刺激で肛門が切れ、裂肛になる場合があります。また、下痢は肛門小窩から細菌が侵入しやすく、痔瘻の原因になります。下痢症とは、「ー日の排便回数が増え、排便は水分が大部分を占め、その量が200ミリリットル以上ある場合」をいいますが、その状態はさまざまです。
便秘は「一過性便秘」と「慢性便秘」に分けることができます。
一過性便秘
旅行にいったり、生活環境が変わったりしたときなどに、一時的に便秘になることがあります。これが「一過性便秘」です。一過性便秘は心配する必要はありません。旅行から戻ったり、生活環境に慣れたりすると、自然に解消されるからです。
慢性便秘
慢性便秘は徐々に進行していきます。近年、とくに女性にこの慢性便秘に悩む方が増えています。慢性便秘は、さらに「器質性便秘」と「機能性便秘」に分けられます。
⇒ 器質性便秘
腸になにか便の通過を妨げる病気が隠れているために発生する便秘です。その代表例が大腸がんですが、大腸ポリープでも起こります。
⇒ 機能性便秘
器質性便秘以外の慢性便秘の場合で、多くは腸の機能が低下しておこります。
・直腸性便秘(習慣性便秘)
・結腸性便秘(弛緩性便秘)
・痙攣性便秘 (便秘型過敏性大腸症候群)
弛緩性便秘
腸の筋肉の緊張が緩み、嬬動運動が弱いため、便を十分に押し出せない状態です。高齢者や運動不足の人、筋肉の弱い女性に多い便秘。腹の筋肉の強化が大切です。
直腸性便秘
便意を我慢していると、直腸の反射が鈍くなり、便が下りてきても便意を感じなくなります。また、骨盤低に異常があり、便を押し出すことができない場合もあります。
痙攣性便秘
ストレスで腸の動きが過敏になることから起こります。腸が痙攣し、ところどころくびれて細くなるため、コロコロ便になったり、下痢や便秘を繰り返します。急な下痢や腹痛、お腹が張ったりします。最近、増加傾向にあります。
直腸牲便秘は「習慣性便秘」とも呼ばれ、日本人にいちばん多い便秘といわれています。若い人に多く見られ、直腸性便秘になると便がカチカチに硬くなり、裂肛になってしまうことも少なくありません。
通常、便が直腸に下りてくると、直腸にあるセンサーが刺激され、便意をもよおします。朝トイレにいく時問がなかったり、仕事中だったりして排便する時間がないと、便意を我慢することがあります。我慢をつづけていると、便意を感じるセンサーがだんだん鈍くなってきます。すると便が下りてきても、便意を感じにくくなってしまいます。浣腸を繰り返している人なども、直腸が鈍感になります。そのため便意を感じなくなり、直腸性便秘になってしまいます。また、骨盤底に異常があり、便を押し出すことができない場合もあります。これは若い女性に多く見られます。
直腸性便秘を改善するには、排便の習慣を取り戻すことが大切です。通常、朝食を摂ってから15~30分後くらいに便意をもよおします。トイレにいけるよう時間に余裕を持って朝食をとり、便意を感じたらすぐトイレに直行するようにしましょう。朝食を抜くことはもってのほかです。便意が途中で途切れてしまったり、トイレにいって排便がなかったりしても、便意があったらまずトイレにだけは入ることが大切です。狂ってしまった習慣を取り戻すには、時問がかかります。それでも、根気よくつづけていると、
起床 → 朝食 → 便意 → 排便
というリズムが整い、快適な排便習慣を取り戻すことができます。
結腸の筋肉の緊張がゆるむと、腸の蠕動運動が弱くなります。そのため、便を十分に押し出せなくなってしまう状態です。中高年の女性に多く見られますが、高齢者、虚弱体質や内臓下垂の人、運動不足の人、病気などで体力の弱った人、多産のため腹筋がゆるんでしまった女性などにも起こりやすい便秘です。
腹部の膨満感、食欲低下などの症状が見られます。頭痛や肩こり、倦怠感、手足の冷え、全身の倦怠感など、便秘と関係なさそうな症状をともなうこともあります。また、便秘なのに、必ずしも便が硬くはなく軟便のこともあります。一応毎日排便はあるものの、残便感で苦労したりすることもあります。これらも、結腸性便秘の特徴的な症状です。結腸性便秘には、常用している薬が原因になっていることもあります。
たとえば、腸への刺激が強い下剤(センナ、アロエ、大黄などが成分に含まれている下剤)で、こうした下剤を長期問服用していると腸の嬬動運動が弱くなり、結腸性便秘になってしまいます。運動不足も、結腸性便秘の原因になります。運動不足は血液の循環を悪くし、腸の蠕動運動が弱くなり、胃・結腸反射や直腸・結腸反射を鈍くします。また、直腸まで下りてきた便をスムーズに出すために必要な腹筋の力も低下するからです。
結腸性便秘の改善方法は、運動をすることです。小腸や大腸は、栄養を運ぶ動脈が通っている腸間膜にぶら下がっている状態になっています。運動するとこの膜が上下・左右に揺らされ、腸の内容物を消化・吸収するための蠕動運動がうながされます。さらに、結腸性便秘の人ほど食物繊維を多く含む食材をしっかり食べ、腸を刺激することが大切です。
痙攣性便秘は、「過敏性腸症候群」によって起こる便秘です。
過敏性腸症候群は、以前は「過敏性大腸症候群」といいれていましたが、現在は「過敏性腸症候群」といわれるようになっています。大腸だけでなく、胃や小腸にも機能の異常があらわれることがその理由です。痙摯性便秘はS字結腸が痙摯し、ところどころがくびれて狭くなります。串団子を想像してみてください。S字結腸が串団子のようになると、便の通過が妨げられ、便の水分がどんどん吸収されてしまいます。そうなると、便はコロコロとした硬い便になります。また下痢や便秘を繰り返したり、急に下痢でお腹が痛くなったりします。
痙攣性便秘の70%以上は、ス卜レスが原因といわれています。腸管の運動は自律神経に支配されています。ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、腸管の運動に異常を生じて下痢になったり、便秘になったりします。また、下痢と便秘を交互に繰り返したりします。症状としては、 次のようなものが挙げられます。
・下痢と便秘を交互に繰り返す。
・腹痛や腹部膨満感がある。
・便が硬く、便秘がちで、ウサギのフンのようなコロコロした便が出る。
・急に下痢でお腹が痛くなり、トイしに駆け込む。
・排便後も残便感がある。
・食後に下痢を起こしやすい。
・ストレスを感じたとき、便意をもよおす。
・腹痛と便意があり、卜イレにいくと粘液が出る。
これらの症状が2~3以上ある場合、痙壁性便秘の可能性があります。対策としては、生活習慣との関連が大きく、食事、排便、運動、睡眠などのライフスタイルを見直す必要があります。これらの生活改善を中心に、症状や病態によって薬物療法を組み合わせた治療が行われます。
・朝食をきちんと食べる。
・食物繊維を十分に摂る。
・和食を中心にする。
・腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える。
・水分をしっかりとる。
・下半身を冷やさない。
・無理なダイエットはしない。
・お腹のマッサージと腹筋運動をする。
・下剤には頼らない。
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