近年、大腸がんになる人が増えています。しかし、検診の普及による早期発見や医療技術の進歩により、生存率は高くなっています。怖いことは、大腸がんを痔と勘違いすることです。
痔でない方は、「痔になったか」と思います。もともと痔をわずらっている人であれば、出血や血便などがあっても、「痔だから…」と痔のせいにしがちです。どちらにせよ、「痔だろう」とか「痔だから…」と勝手に決め込み、医師の診察を受けなかったりします。
当院にも、「痔だと思うのですが…」と診察に見え、診察すると大腸がんだったケースがあります。当院では、年間70~80例の大腸がんを発見しています。治療のために大学病院や専門病院を紹介し、そこできちんと手術を受けていただいています。ひと囗に大腸といっても、大腸は小腸からつながる盲腸、結腸、それに直腸の総称です。がんが最も発生しやすいのは大腸の最後の部分になる直腸で、全体の約50%です。次に多いのがS字結腸で、約30%です。盲腸と上行結腸が合計で約10%、横行結腸と下行結腸がそれぞれ5%ほどとなっています。肛門に近い部分ほど、がんが発生しやすくなっています。大腸がんの主な症状は、肛門からの出血です。
大腸がんで肛門から出血する理由は、大腸にできたがん組織が、便の刺激を受けて出血するからです。痔の出血は、赤い鮮やかな色の血がポタポタと大量に出ます。排便のとき、ティッシュペーパーに真っ赤な血液が付着したような場合、痔による出血と考えてよいでしょう。大腸がんによる出血は、多少濁ったような色の血が、便の周囲やなかに見られます。がん組織から出たドロッとした粘液と、血が混じったものが出ることもあります。ただし、素人判断は危険です。
昔なら、人工肛門をつけなければならなかったような場合でも、いまは肛門を残すように手術できるようになりました。しかし、進行すれば治療が難しくなり、再発の可能性も高くなります。出血や血便があったら、自己診断せず、専門医の受診をお勧めします。
大腸に異常があると、大腸内腔が狭くなって便の通りが悪くなり、下痢や便秘を起こします。大腸がんやポリープ、大腸の炎症性(クローン病、潰瘍性)といった病気によるものがほとんどです。
・予期しない体重の減少があった。
・家族に大腸がんや大腸ポリープひとがいる。
・便に血が混じっている…。
症状や条件が一つでもあった場合、大腸を検査する必要があります。
便潜血反応検査
まず、便潜血反応検査です。この検査は検診でよく行われますが、免疫反応を利用し、目に見えない程度の血が便に混じっていないかを調べます。
便潜血検査は食事制限もなく、便の一部を採取するだけです。簡単な検査ですが、目には見えないような微量の出血が検出できます。陽牲の場合、精密検査を行います。大腸がんの発生には、大腸ポリープが関連しているといわれています。ポリープの大きさが5ミリ以上であれば、便潜血反応で知ることが可能とされています。ただ精度が低く、疑陽性(大腸がんでないのに陽牲となる)や疑陰性(大腸がんなのに陰牲となる)の多いことが欠点です。というのは、大腸がんだけでなく、いろいろな病気でも便潜血反応が陽性になるからです。
たとえば、100万人を検査すると陽性率は5~7%(5~7万人が陽性)になりますが、大腸がん(ポリープがんや粘膜内がんを含む)は全陽性者のだいたい0.1%前後(50~70人)になります。逆に、進行がんでも約30%は陰性となり、早期がんにかぎると約50パーセントが陰性となってしまいます。「便潜血検査で陰性だった。大腸がんではないから安心だ」検査で陰牲となるとこう思いがちですが、実は大腸がんを見逃している可能性が決して低くはないのです。
指診
肛門から人差し指を入れ、直腸を調べます。人間の直腸はだいたい長さが約15センチです。しかも、直腸がんの70%は指の届く直腸の下部にできるため、かなりの確率でがんを発見できます。
直腸鏡検査
肛門から直腸鏡を入れ、S字結腸の下のほうまで調べます。大腸がんの70%程度を発見することができます。
大腸内視鏡検査
現在、最も信頼できる大腸がんの検査法が「大腸内視鏡検査」です。大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸のすみずみまで観察します。検査時間は、だいたい10分程度です。
肛門から出血したり、便に血が混じったりすることがある方、あるいは便潜血検査で陽性といわれた方は、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。必要であれば、組織を採取して検査(生検)することもできます。当院では、高性能の電子大腸内視鏡による検査を行っています。大腸がんも早期のものは治癒率が高く、とくにポリープ状のものは大腸内視鏡検査の際に切除することが可能です。これを「内視鏡下ポリープ切除術」といいます。
大腸は、成人で長さが1.5メートルほどあります。大腸には、小腸で消化吸収された食べ物の残りカスから水分や塩分などが吸収されたあとの便がたくさん詰まっています。そのままでは検査になりませんので、大腸内視鏡検査の前には、浣腸で直腸からS字結腸までの便をすべて排泄します。
注射バリウム造影検査
大腸内視鏡検査は、精度の高い大腸がんの検査法です。ただし、高齢の女性や婦人科手術を以前に受けたことのある女性、また便秘のある方などは、大腸内視鏡検査が行えないケースもあります。
理由は、内視鏡を挿入する際、腸管が固定されずに緊張していない状態だったり、手術による癒着があって腸管にスムーズな動きが見られないといったことがあるからです。こうした状態の場合は内視鏡が使えず、注腸バリウム造影検査を行うことになります。肛門から造影剤(バリウム)と空気を入れ、大腸全体をレントゲン撮影します。かかる時問は10分くらいで、痛みはありません。
CT検査
CTは、X線を用いて体の断層写真を撮る装置です。
CT検査では、当院は16列マルチスライスCTを使用しています。多列マルチスライスCTは、一度に短時間で多くの断層写真が撮影できます。また、3次元画像(水平断、矢上断、前額断)がつくれ、血管系のみ、胆道系のみ、泌尿器系のみの画像を取り出すことも可能です。「水平断」とは、体をスライスした面です。「矢上断」は、頭から足に向かって、体の側面に平行にスライスした面です。「前額断」は、頭から脊椎、鼻、口など、体の正面に平行に二つに切った面になります。
大腸がんの場合、骨盤腔内の膀胱や尿管のほか、男性では前立腺や精嚢腺、女性では子宮や膣などの臓器の位置関係が分かります。それらの臓器にがんが浸潤していないかどうか、浸潤していればどの程度かといった情報も得られます。
このケースはほとんどが大腸がんですが、肛門管がんの場合もあります。肛門管がんは、オシリに発生するがんのことです。ほとんどの場合は痔瘻を治療せず長い間放置していたケースです。大腸がんに比べ、発生率は1~2%とそう高くはありません。
ただ、肛門は消化管の粘膜と皮膚の境目にあることから、がんの組織型が多種多様であることが特徴です。また、悪性黒色腫(メラノーマ)やパジェット病といった肛門に特徴的ながんもあります。胃や大腸などと違い、肛門は外部から見たり触ったりできる場所です。がんが早期に発見されやすいと思いがちですが、実はそうでもありません。肛門管がんの症状は、排便時に出血がある、しこりが触れる、肛門に痛みがあるなど、痔の症状とほとんど変わりません。そのため自己診断で痔と思っているケースが非常に多く、逆に発見が遅れやすいのです。
「市販薬を使っていたのですが、オシリの具合が悪くて…」当院を受診する患者さんにも、こうした方がよくおられます。診断すると、すでに進行した肛門管がんだったという不幸な事実をよく経験します。肛門管がんの治療は、がんの組織型によって若干異なります。
粘膜から発生しやすいのは、腺がんや粘液がんです。この場合、ある程度進行してしまうと、がんを切除する際、肛門をくりぬいて人工肛門にするしかありませんでした。しかし最近は、進行がんでも比較的発見が早ければ、内括約筋切除(ISR)という術式があります。この術式であれば、自然肛門を残すことができます。皮膚の部分から発生しやすいがんは、扁平上皮がんです。この場合は放射線と抗がん剤を併用した治療法があります。欧米の臨床試験では手術に匹敵する効果を挙げていて、日本でも第一 選択になりつつあります。肛門管がんも、大腸がんの場合と同じく、大学病院や専門病院を紹介し、そこで手術を受けていただいています。
札幌いしやま病院 | 〒064-0915 札幌市中央区南15条西10丁目4-1 | 【札幌いしやま病院】 〒064-0915 札幌市中央区南15条西10丁目4-1 |
札幌いしやまクリニック | 〒064-0915 札幌市中央区南15条西10丁目4-10 | 【札幌いしやまクリニック】 〒064-0915 札幌市中央区南15条西10丁目4-10 |
いしやま形成外科クリニック | 〒064-0915 札幌市中央区南15条西11丁目2-6 | 【いしやま形成外科クリニック】 〒064-0915 札幌市中央区南15条西11丁目2-6 |