通常肛門は、便やガスが無意識のうちに漏れたりしないように、「括約筋」という筋肉で閉じられています。しかし、これだけでは不十分なため、肛門の出口から数センチ入ったところに、「肛門クッション」と呼ばれる柔らかな盛り上がり(血管の集まり)があります。これにより、括約筋が強い力で収縮しなくても便などが漏れない仕組みになっています。
肛門クッションは、水道の蛇口に付いているゴム栓(パッキン)のような役割を果たしているのです。
排便時に強くいきむなど、肛門に負担がかかることが度重なると、徐々に肛門クッションが腫れて、本来あるべき位置から「ずれ落ちた状態」になってしまいます。これが痔核です。
初期段階であれば薬や生活改善で症状は良くなりますが、痔核が脱出するようになった場合には手術などの治療が必要となります。
当院では、注射療法(ジオン注による内痔核硬化療法 = ALTA注射)を行っています。ALTAという注射薬を内痔核に直接注射することによって痔核を縮小させる方法です。メスを入れないため日帰り治療も可能です。
注射療法(ジオン注による内痔核硬化療法 = ALTA注射)では、メスを入れないため、治療後の痛みも少なくて済みます。
注射療法(ジオン注による内痔核硬化療法 = ALTA注射)では、健康保険が適用になるため、大きな経済的負担を強いられることはありません。
1.痔核上局部粘膜下層
2.痔核中央部粘膜下層
3.痔核中央部粘膜固有層
4.痔核下局部粘膜下層
脱出した内痔核を持ち上げ、位置を直すと同時に内痔核への血流を減少させることで、痔核を縮小させます。
当院では、本来肛門にとって必要なクッションを切り取らずに元の位置に戻す手術(肛門クッション吊り上げ術 =ACL法)を開発し、20年前から行っています。この手術は20年の歳月の中で、ブラッシュアップされ、多くの患者様の治療に目覚ましい効果をあげ、“肛門機能を損なわずに治療できる”方法として確立しています。
この術式は内括約筋から痔核組織を剥離して適正な位置に吊り上げ、吸収糸で内括約筋に縫合固定するというものです。「切り取らない」ため、術後に肛門狭窄(肛門が狭くなってしまう)などの機能障害をきたすことはなく、“美容的にもすぐれた術式”であると考えております。
つまり、肛門クッション吊り上げ術(ACL法) = 「肛門形成手術」という位置づけであり、肛門形成手術は肛門における「美容形成的手術」であるといえます。
現在に至るまでに技術の研究を重ね、痛みが少なく、入院期間も短縮できるようになりました。
●これまでの治療
患部を切り取ってしてしまう
見た目も美しくなく、切り取ることで肛門が狭くなったりといった機能的弊害も…
●当院のACL法
吊り上げて元の位置に戻してあげる
見た目もキレイで、切り取らないため肛門機能を温存でき、術後の疼痛も少ない!
痔核は良性疾患であるため、機能温存がより重要
これまで痔核の手術は、「結紮切除(けっさつせつじょ)」といって、患部を切り取ってしまうという手術が行われてきました。そして現在も広く行われています。しかし、肛門は便を排出するばかりでなく、便を保持したり、便とガスの区別をするなどの高度な機能がそなわった臓器といえます。痔の治療は、癌の手術などのようにとってしまえば終わりというものとは異なり、そういった機能の温存が最も大切になります。
「痔は治ったけれど、肛門が狭くなって便が出なくなった」ということでは、治療をしても逆効果です。痔の治療においては、“機能温存と根治性の両立”が最も大切になるのです。
これまで痔核の手術である、「結紮切除(けっさつせつじょ)」では、肛門クッションを切り取ってしまうことで、肛門がせまくなってしまったり、術後の見た目も美しくなく、多くのデメリットが存在しました。
そこで当院では20年前に、「どうしたら肛門機能を温存できるか」、「どうしたら見た目を損なうことがないか」に向き合い、「ずれ落ちたのなら、その部分を切除するのではなく、吊り上げれて元の位置に戻してあげたらよいのではないか」という発想から、全く新しい手術である「肛門クッション吊り上げ術(ACL法)」を開発しました。
まぶたの場合
下垂してきたものは吊り上げればいい
痔核を括約筋から剥離(はくり)します。
剥離とは「はがす」ことをいいます。肛門クッション吊り上げ術(ACL法)では、痔核を切除しません。
一度剥離した痔核部分を吊り上げます。
本来、肛門クッションがあるべき位置を推測し、その位置を決定して、吊り上げます。
肛門クッションが本来あるべき位置へ吊り上げたら、その位置に縫合します。糸は抜糸の必要のない、いずれ身体に吸収されるタイプの糸を使用します。
このように、痔核の切除は行わずに本来の状態に戻すのです。
本来の形態に戻ることで、自然と痔核だった部分は正常な状態に回復します。
痔核部分が大きな場合には、「ALTA注射」を併用する場合もあります。
これまで痔核の根治手術といて行われてきた「結紮切除術」では、肛門クッションの部分を切り取ってしまうため、術後に肛門狭窄などの機能障害がでることも少なからず存在していました。
当院では、ACL法+ALTA注射を行っています。注射だけで済む部分はALTA注射療法を、注射だけでは治療できない部分はACL法を。このように2つの治療の強みを生かし、より広い領域を切り取らない治療でカバーすることが可能になっています。
ACL法は術後の痛みが小さい特徴があり、注射療法(ジオン注による内痔核硬化療法=ALTA注射)は、メスを入れないため、やはり、治療後の痛みが少ないという特徴があります。
ACL法も、ALTA注射も入院期間が短くて済むという特徴があります。それゆえに、この2つをミックスした「ACL法+ALTA注射」でも、短期入院で済ませることができます。
痔核の度合い(軽度~中等度~重度)により、治療法を選択、または複合的な治療を行います。ALTA注射のみでは改善しないような大きな痔核に対しては、必要に応じて形成術を併用して(形成術とALTAの併用療法)、できるだけ肛門に優しく、痛みの少ない治療法を患者さんと相談してから選択しています。