大腸に異常があると、大腸内腔が狭くなって便の通りが悪くなり、下痢や便秘を起こします。大腸がんやポリープ、大腸の炎症性(クローン病、潰瘍性)といった病気によるものがほとんどです。
便潜血反応検査
まず、便潜血反応検査です。この検査は検診でよく行われますが、免疫反応を利用し、目に見えない程度の血が便に混じっていないかを調べます。
便潜血検査は食事制限もなく、便の一部を採取するだけです。簡単な検査ですが、目には見えないような微量の出血が検出できます。陽牲の場合、精密検査を行います。大腸がんの発生には、大腸ポリープが関連しているといわれています。ポリープの大きさが5ミリ以上であれば、便潜血反応で知ることが可能とされています。ただ精度が低く、疑陽性(大腸がんでないのに陽牲となる)や疑陰性(大腸がんなのに陰牲となる)の多いことが欠点です。というのは、大腸がんだけでなく、いろいろな病気でも便潜血反応が陽性になるからです。
たとえば、100万人を検査すると陽性率は5~7%(5~7万人が陽性)になりますが、大腸がん(ポリープがんや粘膜内がんを含む)は全陽性者のだいたい0.1%前後(50~70人)になります。逆に、進行がんでも約30%は陰性となり、早期がんにかぎると約50パーセントが陰性となってしまいます。「便潜血検査で陰性だった。大腸がんではないから安心だ」検査で陰牲となるとこう思いがちですが、実は大腸がんを見逃している可能性が決して低くはないのです。
指診
肛門から人差し指を入れ、直腸を調べます。人間の直腸はだいたい長さが約15センチです。しかも、直腸がんの70%は指の届く直腸の下部にできるため、かなりの確率でがんを発見できます。
直腸鏡検査
肛門から直腸鏡を入れ、S字結腸の下のほうまで調べます。大腸がんの70%程度を発見することができます。
大腸内視鏡検査
現在、最も信頼できる大腸がんの検査法が「大腸内視鏡検査」です。大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸のすみずみまで観察します。検査時間は、だいたい10分程度です。
肛門から出血したり、便に血が混じったりすることがある方、あるいは便潜血検査で陽性といわれた方は、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。必要であれば、組織を採取して検査(生検)することもできます。当院では、高性能の電子大腸内視鏡による検査を行っています。大腸がんも早期のものは治癒率が高く、とくにポリープ状のものは大腸内視鏡検査の際に切除することが可能です。これを「内視鏡下ポリープ切除術」といいます。
大腸は、成人で長さが1.5メートルほどあります。大腸には、小腸で消化吸収された食べ物の残りカスから水分や塩分などが吸収されたあとの便がたくさん詰まっています。そのままでは検査になりませんので、大腸内視鏡検査の前には、浣腸で直腸からS字結腸までの便をすべて排泄します。
注腸バリウム造影検査
大腸内視鏡検査は、精度の高い大腸がんの検査法です。ただし、高齢の女性や婦人科手術を以前に受けたことのある女性、また便秘のある方などは、大腸内視鏡検査が行えないケースもあります。
理由は、内視鏡を挿入する際、腸管が固定されずに緊張していない状態だったり、手術による癒着があって腸管にスムーズな動きが見られないといったことがあるからです。こうした状態の場合は内視鏡が使えず、注腸バリウム造影検査を行うことになります。肛門から造影剤(バリウム)と空気を入れ、大腸全体をレントゲン撮影します。かかる時問は10分くらいで、痛みはありません。
CT検査
CTは、X線を用いて体の断層写真を撮る装置です。
CT検査では、当院は16列マルチスライスCTを使用しています。多列マルチスライスCTは、一度に短時間で多くの断層写真が撮影できます。また、3次元画像(水平断、矢上断、前額断)がつくれ、血管系のみ、胆道系のみ、泌尿器系のみの画像を取り出すことも可能です。「水平断」とは、体をスライスした面です。「矢上断」は、頭から足に向かって、体の側面に平行にスライスした面です。「前額断」は、頭から脊椎、鼻、口など、体の正面に平行に二つに切った面になります。
大腸がんの場合、骨盤腔内の膀胱や尿管のほか、男性では前立腺や精嚢腺、女性では子宮や膣などの臓器の位置関係が分かります。それらの臓器にがんが浸潤していないかどうか、浸潤していればどの程度かといった情報も得られます。